
濵本 智博
株式会社BeLIVE
代表取締役
面白い大人に出会い続けよう
HAMAMOTO TOMOHIRO
未来のワクワクを育む会社
モノを売る、という経済活動は、社会への参加のひとつの形だ。商いの経験を通じて、人は「提供」「対価」「信頼」という経済の根幹を体感し、価値創造の喜びを覚える。そして失敗もまた、事業の肥やしとなる。これは子どもだって同じこと…自分が売れる!と思って仕入れたものの、売れ残ってしまった駄菓子を前に、なぜ手に取られなかったのかを考える時間は、失敗を恐れる心に反論を突きつける。
長崎県佐世保市を拠点に、子ども向けビジネススクール運営と経営理念策定・浸透コンサルティングを手がける株式会社BeLIVE(ビライブ)。代表取締役の濵本智博は、金融機関紹介を通じて中小企業の経営再建に携わった税理士法人勤務時代から一転、「未来を見据えた経営計画」の普及の必要性を痛感し、会社を設立。「相手の可能性を本人以上に信じること」を社是に、経営者だけでなくスタッフ全員を巻き込む理念策定プロセスと、子どもが自己肯定感を育みながらビジネス思考を学ぶプラットフォーム提供で、長崎の未来を照らしている。
自分のスキルで貢献するには
幼少期、自己主張の強さゆえコミュニケーションに苦労した体験が、後の「相手の目線を合わせて伝える」姿勢の原点だという濵本。関西学院大学文学部卒業後、リーマンショックの混乱に巻き込まれ、心身の不調も相まって退職を決意。その後、退職金を元手に通ったコンサルタント養成講座での仲間との出会いや、尊敬する経営者の「経営の根幹に寄り添った仕事ができれば、あなたなら必ず成功する」という言葉が支えとなり、個人事業主として開業した。
法人化から間もなく、長崎へのUターンを決断したという濵本。その背景には、濵本の妻のことばがあった。「将来やりたいことがあるなら、子供が自立してからじゃなくて、両親が元気なうちに一緒に地元で過ごして、その後にやったらどうか…そう言われました。正直なところ60歳くらいで、仕事が落ち着いてからゆっくり、と思っていましたので驚きはあったのですが、よくよく考えるとたしかにそのほうが良いのかな、と(笑)。戻ったタイミングで、この地元になにか貢献していきたいと考えていたさなか、それまでやったことのない教育の分野で、しかも自分の経営支援の経験が活かせそうな「CEOキッズ」に出会ったときは、まさにこれだ!と思いました。最高の巡り合わせと確信してからは、情報収集も法人化も、フランチャイズの費用も、全部バタバタと進めて、とにかく走り出したって感じですね。あのとき助言してくれた妻には本当に感謝しています」
小学生が“クラファン”!?
現在、同社が展開する教育プラットフォームの一つ「CEOキッズアカデミー」には、小学3年生から高校3年生を対象に、ビジネスの基礎知識から開業資金の計算、商品デザインやプレゼンテーションまでを1年間で体系的に学ぶプログラムがある。低学年の豊かな発想力を高学年の応用力と組み合わせることで、実際にクラウドファンディングを検討するレベルのアイデアを生み出す子もいるという。
また、昨年リリースした小〜中学生向けのオリジナルのオンラインコンテンツ「GIFT(ギフト)」では、ビジネスの学びだけでなくコミュニケーションスキルや目標達成のノウハウを取り入れ、毎月多彩な経営者を招いて対話やワークショップを実施。
講師自身も企業経営者や中小企業診断士、コンサルタントなど経営に携わる面々が揃い、子どもたちに「多様な大人」との出会いを届けている。
一方、法人設立以来の柱である経営コンサルティング事業では、経営者だけで作る理念ではなく、スタッフ全員を巻き込む泥臭いプロセスを徹底。ビジョンから逆算した数値目標に意味づけを行い、組織内の意識ギャップを埋める手法は、多くのクライアントから評価を得ている。子ども向け教育と大人向けコンサルティング、いずれも「目線を合わせて伝える」という本質で結びつき、相乗効果を生んでいるのが、BeLIVEならではの強みだ。
面白い大人にたくさん会ってほしい
今後は、ビジネススクールの受講生をさらに増やし、学校法人やフリースクールへのコンテンツ提供を進めるとともに、高校における部活として「起業部」の設立や運営の支援を全国100校へ展開する計画だ。地域企業と学生をつなぎ、地方創生をプラットフォームとして具現化することで、長崎から、そして各地方からとんでもない経営者が生まれると濵本は読む。
「子どもたちにはぜひ面白い大人にたくさん会ってほしいですね。社会に出るまでは、学校や家庭、塾の先生といった限られた大人像しか知り得ない。特に地方では働く会社のイメージすら持てない子もしばしば…彼らの多くがYouTubeやゲームの世界に成功者を見出すのは、ある意味当然の帰結と言えるでしょう。
長崎にも「良い会社」や「面白い経営者」がゴロゴロいます。でもその存在を知らなければ、子供たちの選択肢は広がらないんです。実は身近に潜んでいる彼らの「面白さ」に触れる機会を見つけ出し、子どもたちがより自分らしく生きる可能性を見出してくれたら、これほどうれしいことはありません」
将来、誰も予測し得ない時代が来ても、小さな頃に得た「価値を生み出す視点」と「失敗を学びに変える力」は、人生を支える羅針盤となるだろう。社会に飛び立つ前に身につけられるこの学びは、ただの知識ではなく、生き抜く力を育む確かな土台となる。地元の豊かな食文化や人情が、学びの場をさらに豊かに彩るに違いない。BeLIVEの挑戦は始まったばかりだ。
濵本 智博
株式会社BeLIVE 代表取締役
長崎県佐世保市出身。2003年に関西学院大学文学部を卒業後、神戸の税理士法人に就職。リーマンショック後の経営再建に携わる中で、将来に目を向けた経営計画策定の重要性を痛感。2021年に株式会社BeLIVEを設立、長崎に本社を移転。現在は子ども向けビジネススクール運営と経営コンサルティングの二本柱で事業を展開。現在は「高校にビジネス起業部を立ち上げる支援」に注力し、地域貢献と次世代の育成を目指している。