
高﨑 智也
医療法人 NATURAL TEETH
理事長/歯学博士/プロデューサー
長崎から世界へ!常識を「削る」
TAKASAKI TOMOYA
隠れキリシタンの島で隠れてない歯学博士
西の果て、長崎県平戸市、隠れキリシタンで有名な生月島。人口約4,500人の穏やかな島で、朝焼けにきらめく玄界灘の潮騒を背に、白壁とガラスが光をはじく診療室が立っている。医療法人NATURAL TEETH。窓の外の水平線と、誰もが持つ天然歯、その両方を同じまなざしで見つめる男がいる。
理事長・高﨑智也。「自分の歯が一番。だから守る」彼が好む言葉は、まるで海風のようにシンプルで力強い。開業から20年、僻地と言われる場所で自費診療を選択する患者が多く、地方都市の常識を軽々と超える。なぜ辺境でそんな奇跡が可能なのか。
歯科治療のブラックボックスを“見える化”
奨学金とアルバイトでしのいだ大学・大学院時代。残高、マイナス830万円。福岡・博多駅近くの自費専門クリニックで雇われ院長を務めながら、いつか独立を…そう胸に刻んでいた。
だが医療コンサルタントが差し出した地図は、生月島という縁もゆかりもない島だった。「高﨑先生なら、どこでも開業できる。担当者にそう背中を押されて紹介されたのがここでした」半信半疑で視察に訪れた瞬間、窓がないビルの中で息を潜めていた都市の暗闇が、海の蒼さに溶けて消えたという。ああ、ここだ。借金と希望を抱えた青年は、その場で即決した。
開業準備のさなか、歯科大手メーカーの重役に冷笑された。そんな僻地で自費治療なんかできるわけがない。だが高﨑は笑わなかった。島民を都市と同じレベルで診る。いつしかそれが彼の使命となっていた。結果、自費率は6割超。得た利益を再投資し、最新機器と世界水準の診療を実現した。手術用顕微鏡マイクロスコープを駆使し、施術映像を患者に示すなど、歯科治療のブラックボックスを”見える化”することにより、信頼を着実に重ねていった。
開業して数年後、研修会で再会した大学同期が投げた言葉は毒矢だった。「お前、田舎で悪徳歯医者をやってるらしいな…。そう言われたのを今でも覚えています。憤りもありましたが、コミュニティーが密な地方では悪い噂はすぐに広まることを知らない呆れのほうが強かったです。」生月に戻り、彼は広大な海原の前で誓う。都会の同業者が驚く歯科医療を、この島で命懸けで実践する、と。その誓いは今や現実となっている。離島から片道9時間かけて通う船員、海外赴任中に一時帰国して治療を受ける研究者。口コミは海流のように島を超え、患者は国境を超えつつある。
“大自然に囲まれた島で天然歯を守る”ために
現在、スタッフは7名。受付の1名以外全員が歯科衛生士資格を持ち、平均勤続年数は10年以上を誇る。子育て世代には勤務時間を柔軟に調整し、県内トップクラスの給与水準と福利厚生を提供している。「口腔内を守る歯科衛生士がいなければ、歯科医師は鉄砲のない兵士でしかありません」と高﨑は語る。予防と治療は両輪である。スタッフの誇りが、患者の安心を支え、結果として経営の強靭さを生むのだ。
治療技術も研ぎ澄まされ続ける。低侵襲インプラント「NTインプラント」は、2008年夏にアメリカのサンフランシスコで受けた集中セミナーの衝撃から生まれた。山梨の秋山勝彦先生が世界で初めて開発した手術用顕微鏡を臨床応用したスリーステップ秋山メソッドを用いた歯ぐきを開かない歯周治療G‑SAF(ジーサフ)、歯ぐき下がりを改善する痛みや出血がない歯肉移植。どのメニューにも“痛み・腫れ・出血を最小に”という共通の覚悟が脈打つ。残念ながら歯を失った患者には、世界チャンピオン技工士と組む、良か良かデンチャーを提案している。
医院名NATURAL TEETHには、“大自然に囲まれた島で天然歯を守る”という宣言が刻まれている。それを突き詰めれば「自分たちが受けたい医療をそのまま患者さんに提案する」という彼の理念の具現化と言えよう。
未来を拓く「常識を削る」哲学
高﨑が描く未来図は明確だ。生月島を「日本の西の果て」ではなく「アジアの中心」と再定義し、世界中から患者が集まる医療ハブへと昇華させることを目指している。すでに島の診療室から発信される情報は、海外の歯科医師コミュニティで注目を集め、共有され始めている。彼の視線の先には、国内外の若手歯科医師たちが集い、交流する「島カンファレンス」の光景が広がっている。
若者へのメッセージとして「日本はまだ夜も出歩ける国です。海も山も、技術も文化も、世界に誇れる。だったら、やりたいことを心に留めておく理由はありませんよね」と力強く語る高﨑。彼が秘めているのは「自分の海を探し、そこに居場所を築くことが世界を切り拓く操舵輪となる」という熱い想いだ。
今日もまた、高﨑は「歯は極力削らず、常識を削る」という哲学のもと、新たな挑戦を続けている。
高﨑 智也
医療法人 NATURAL TEETH 理事長/歯学博士/プロデューサー
1972年長崎市生まれ。1999年九州大学歯学部卒、同大博士課程修了後、博多で自費専門院長を経て、2005年平戸市生月(いきつき)島にNATURAL TEETHを開設。低侵襲インプラントとマイクロスコープ治療を牽引し、長崎大学臨床教授、東北大学非常勤講師、歯科大手メーカーの講師として後進育成にも尽力。