「根拠のある安心」で海を越えるお茶
「毎日の暮らしの中で、安心して飲み続けられるお茶を届けたい」。そんな想いからスタートしたのが、佐賀県を拠点とするがばい農園である。ごぼう茶やどくだみ茶など、主に国産原料を使用した健康茶をインターネットのみで販売している。
健康茶は特別な時だけではなく、毎日の生活に自然に溶け込んでいるものだ。だからこそ「なんとなく安心」ではなく原料の産地や栽培方法、製造工程まで徹底的に向き合った「根拠のある安心」を届けることを最重要視している。自社工場ではHACCP認証や有機JAS認証を取得し残留農薬検査や放射能検査も実施。外部の人間を立ち入らせないなど、徹底した安全管理体制を敷いている。すべては「自分たちが家族に飲ませたいと思える商品か」という厳しい基準をクリアするため。現在では若い世代や忙しい現代人にも気軽にお茶を楽しんでもらえるように粉末スティックタイプなど時代に合わせた商品開発も推進。さらにECやTikTokをはじめとしたSNSを駆使し、商品の魅力だけでなく、生産者や畑、製造工程などの背景まで積極的に発信している。地方から全国、そして海外市場への展開を進め、一杯のお茶がどこから来たのかまで知ってもらえるブランドを目指している。

どん底からの転換と、引き継いだ軌跡
順風満帆に見える児玉の歩みだが、その道のりは決して平坦ではなかった。システム会社を退職し、IT事業で独立した当初は、「お金が欲しい」という思いから人の3倍働き、寝る間も惜しんで仕事に没頭した。しかし、事態は好転せず、家賃4万5000円、手取り12万円で食べるのにも困る極貧生活が2〜3年続いたという。「自分が正しい。悪いのはお客様や環境だ」と、外部要因のせいにしてばかりいたどん底の時期だった。
転機となったのは、読書や周囲の成功者からの学びだった。自身のあり方を見つめ直し、他責にするのをやめたことで、少しずつ歯車が噛み合い始めた。そんな中、システム会社時代の取引先だったがばい農園の先代社長から「事業を引き継がないか」と声をかけられた。”先を見て行動しなければ”という思いと、「ITブームはいずれ終わる。直販ビジネスをやりたい」という直感が合致し、M&Aによる買収を決断。これが現在の多角化経営の第一歩となった。その後も、焙煎会社や農業法人、さらには1966年創業の木寺石油株式会社などの事業を次々と引き継ぎ、グループは5社へと拡大。長い歴史のある会社を引き継ぐことは、「自分の会社になった」というよりも「次の世代まで残していく責任を預かった」という感覚が強いと児玉は語る。良い部分は守りつつ、時代に合わせて変えるべきところは思い切って変える。失敗を恐れずひとつずつ挑戦し、改善を繰り返すことで、現在の力強い組織を作り上げてきた。

「地方だからこそできる」地域循環という強み
児玉が経営において最も大切にしている視点の一つが、「地方の会社だからできること」である。人口減少や農業の担い手不足など、地方が抱える課題は多い。しかし、インターネットやSNSの発達により、地方と都市部の情報格差は縮小し、佐賀にいながら世界を相手にビジネスができる時代になった。
佐賀で事業を行う最大の強みは、「自然と街、人との距離感の近さ」だという。少し車を走らせれば畑があり、生産者と直接顔を合わせて「今年の出来」を語り合える。この一次情報が、商品企画における大きな財産となる。無理に都会の真似をするのではなく、佐賀にある「農業」「自然」「人とのつながり」を武器に変えていく。
がばい農園が目指すのは、単なる規模の拡大ではない。地域で育てられた農産物に付加価値をつけ、加工、ブランド化、販売、発信までを一貫して地域で行う。そして、得られた利益が再び生産者や地域に戻ってくる「循環」を佐賀につくることだ。10年、20年先にも佐賀の畑が残り、そこで作られたものが世界中で愛される。「地方にいるからできない」ではなく「地方にいるからこそできる」可能性を、事業を通じて形にし続けている。

未来を創るのは自分自身
グループ5社を率いる児玉は自身のキャリアに対して明確な「出口戦略」を持っている。「50歳で区切りをつける」と決めており、逆算して今何をすべきかを常に考え、行動しているのだ。また、会社が成長するためには、社員がやりがいを持ち、幸せになれる環境づくりが不可欠だと考えている。そのためには、自身がカリスマ社長になるのではなく、周りに優秀な人材を育てることが自身の仕事だと位置づけている。
そんな児玉から次世代を担う若者たちへのメッセージは、極めてシンプルかつ本質的だ。「人は変えられない。変えられるのは自分自身と自分の未来だけ」
外部環境や他人のせいにすることは簡単だが、それでは何も変わらない。自分の未来を変えるためには、まず「自分が本当に求めているものは何か」を徹底的に棚卸しし、目的を明確にすることが重要だという。そして、日々の思考を管理し、言動をコントロールする。思考が変われば言葉が変わり、言葉が変われば習慣が変わり、やがて環境そのものが変わっていく。「判断軸を磨き、自分自身を信じること」。若き日の挫折から這い上がり、数々の企業を再生・成長させてきた児玉の言葉には、確かな重みと希望が宿っている。次世代へと続くバトンを握りしめ、児玉は今日も佐賀から新しい価値を世界へと問い続けている。
