
村井
株式会社オプティム
佐賀本店オフィス長
「NARIKIRI(なりきり)」こそ課題解決の道筋
MURAI
あらゆる産業の課題をDXで解決してしまう会社
汗をかき、足で稼ぐ。かつての仕事観は、そうした努力にこそ価値を置いた。だが令和になった今、現場に立つ人々の背中を「見えない仲間」が支えている。センサー、AI、クラウド。それは目に見えぬ力で人の判断を助け、重い荷を軽くし、迫る予兆を伝えてくれる。人の力を最大限に生かすことができる未来が、現実的になってきている。
株式会社オプティムは、AI・IoT・Cloud・Mobile・Roboticsを駆使したプラットフォームを開発し、あらゆる産業のDXを推進する会社だ。設立から20年以上過ぎた現在、オプティムは400名以上の仲間とともに、未来への挑戦を続けている。
佐賀から人の役に立つ技術を提供したい
創業の原点は、ただテクノロジーを売ることではなかった。神戸生まれで幼少期から「人の役に立つ技術」に関心を持っていた創業者の菅谷氏は、農学部在学中の2000年、佐賀大学を休学して株式会社オプティムを起業した。当時は常時接続のインターネットがまだ一般的でない時代。請求書や見積書の書き方さえわからない中、鳳雛塾という佐賀県の起業家ネットワークや佐賀の政財界と協力し、一歩ずつ事業基盤を築いていったという。佐賀の豊かな自然に触れ、農業こそが「人類にとってインパクトがあり、人の役に立つ技術」と信じてきた菅谷氏は、地元の自然や課題と向き合う中で、「テクノロジーとの融合で豊かな地域社会をつくる」というミッションを刻み込んでいった。
菅谷氏と同じ熱意をもってオプティムで活躍する人間も多い。今回インタビューに答えてくれた村井は佐賀県唐津市の出身。ふとしたきっかけで、地元でスマート農業に取り組む会社としてオプティムの名を耳にした彼は、その後のニュースで地元佐賀大学内に研究拠点が設置されたことを受け、新たな可能性への好奇心に突き動かされて中途入社を決意したという。今では佐賀本店にてオフィス長を務め、さらには県内の大学を中心に産学連携の旗振りを担っている。
徹底したエンドユーザー目線
オプティムは「◯◯×IT」という考えに基づき、 AI・IoT・Cloud・Mobile・Roboticsの技術を、さまざまな産業領域と融合させることで、第4次産業革命型産業へ再発明することに取り組んでいる。スマート農業では、試験的なドローン飛行から実際の農家との共同検証へと移行し、単なる技術提供にとどまらず、作物を市場価格で買い取り、さらに付加価値を付けて販売するという、生産者のリスクを低減しながら双方の収益向上を実現する新たなビジネスモデルを確立した。
農業、医療、建築土木。業界が違えば求められるものも違う。各業界が抱える課題に、オプティムはどのような姿勢で取り組んでいるのか。村井はこう語る。「新しくシステムを構築するうえで欠かせないのが、エンドユーザーの目線です。徹底した利用者目線でサービスをつくっていかないと、真の課題解決には到底至らない。社内では【NARIKIRI】という表現で、すでにこの視点が浸透しているのが強みです」
自治体や大学との連携にも積極的だ。2017年には佐賀大学農学部と共同で小型ドローンを用いたスマート農業の実証実験をスタート。耕作地での農薬散布・撮影データをリアルタイムにクラウドへ送信するシステムを共同開発し、データ収集から解析までを一貫して検証した。その後、なんと佐賀大学キャンパス内に『OPTiM SAGA』を開設し、学生向けインターンシップや共同研究を通じて、AI・IoT技術のフィールド適用性を深く掘り下げている。加えて、2025年4月に開設された、九州栄養福祉大学の食環境データサイエンス学科の共創企業として、農業・食のDX化を推進するデータサイエンス人材育成に参画中だ。オプティムの強みであるこうした連携活動が、地域の“実証フィールド”を活かした真のソリューション実装力を支えている。
地方都市としての“誇り”を胸に
社内には、“存続を目的とせず、たえず身の丈に合わない大きな志を持ち、楽しみながら挑戦する”という経営理念が根付く。大企業的な慎重さとベンチャー的なスピード感を併せ持ち、一人ひとりの裁量も大きい。学生アルバイトから新卒社員まで、多様な人材がフィールドワークに参加し、実践的な学習機会を享受する環境は地方ならではの誇りである。
これからもオプティムは、DXのさらなる深化と生成AIの融合によって、農業・医療・建設のみならず、教育や福祉、インフラ分野へと領域を拡大していく意志を示す。技術革新の波に浮かぶ島のような地方都市が、いまやグローバルな挑戦の舞台となり得ることを、体現し続けるだろう。
村井
株式会社オプティム 佐賀本店オフィス長
2006年熊本大学工学部情報工学系学科を卒業後、約12年間プリンターメーカーにてファームウェア開発に従事。2018年に株式会社オプティムに入社し、社長室知的財産ユニットで特許・商標の権利化・管理業務を担当。2023年4月に佐賀本店に異動後は、佐賀・九州エリアの営業、企画、採用活動も兼任している。2024年からは佐賀銀行との合弁VCであるオプティム・バンクテクノロジーズ株式会社の取締役も務めている。