
鶴田 修一
Cross Eホールディングス株式会社
常務取締役
心の鏡を拭こう
TSURUDA SHUICHI
長崎県民の笑顔を技術で守っている会社
Cross Eホールディングス株式会社は、「思いやりの技術で、笑顔あふれる日々を未来につなぐ」をグループパーパス(存在意義)に掲げ、長崎県に本社が所在する唯一の上場企業として、確かな足取りで地域の経済風景を彩っている。
創業当初から掲げてきた「長崎(ふるさと)の人と技術で社会を守る」を体現しているのが、今回インタビューに応えてくれた常務取締役・鶴田修一氏だ。ハウステンボスの開業プロジェクト段階から参画し、現在はCross Eホールディングスの常務取締役を務める。多数の事業を牽引した経験がある彼が心がけているのは、挑戦を続けるうえで欠かせない“ある姿勢”だった。
異なる3つの市場で事業を営むグループ
Cross Eホールディングスは、事業会社であるハウステンボス・技術センター株式会社の持株会社機能に必要な部門のみを切り出し、2022年11月1日に純粋持株会社として設立された。背景には、設立28年目を迎えていた同社が、急激な社会変化に対応しつつグループ一丸となり持続的な成長を遂げるため、よりスピード感ある経営判断と効率的・効果的な経営体制構築が必要であったことが上げられる。
グループの母体である同社は、1995年に設立され、ハウステンボスの施設管理や各種更新工事やアトラクション建設などを担ってきた歴史を持つ。2017年には西日本エンジニアリング株式会社の事業承継型M&Aを実施し、関東から沖縄までのエリアを担う環境プラント事業をグループに取り込むことで、事業領域を拡大。2025年10月には新しく地元佐世保市にて創業80年の老舗電気工事系会社をグループ傘下に招き入れ、市場の幅を広げる見込みだと鶴田は語る。
株式上場の狙いは達成間近
Cross Eホールディングスは、社会的な信用力と知名度向上を狙って株式上場に取り組んできた。特に人材採用の推進とM&Aの実現を短期目標に掲げた結果、上場後1年足らずで24名の入社が実現。これにより人材獲得面での事業の行き詰まりのリスクが解消されつつある。
M&Aについても、先述のとおり電気工事系会社のグループインが決定し、効果を発揮している。引き続きM&Aによるグループ拡大戦略に力を入れたいと考えている。株式上場という戦略が、しっかりと実を結んでいる。
すでにグループ全体の従業員数は約140名。持ち株会社として統括しながらも、事業会社の現場の声を大切にする企業文化が根づいているのは印象的だ。
グループ全社で役員室や社長室を設けず、上役と社員との距離を限りなく近く保っているのがCross Eホールディングスの特徴。社員からの改善提案が即座に反映されるフラットな組織風土は、固定観念を打ち破り、新たな発想を生む土壌となっている。
心の鏡を拭く
今後のビジョンは2つに集約される。まずは、2024年8月に福岡証券取引所へ上場を果たしたことを土台に、地元長崎に本社を構える唯一の上場企業としてさらなる飛躍を期すこと。将来的には東京証券取引所への上場を目指し、信用力と資金力を備えた企業集団を築く。第二に、多角的な事業展開を通じて長崎経済の活性化と雇用の維持拡大に貢献することである。異なる市場をもつ複数の会社を抱えることで、変化の激しい外的環境の影響で、いずれかの会社が厳しい状況にあっても、他が支え合える、リスク管理がなされた企業集団であることを追求している。
そして鶴田は折に触れて「変化の先を読むこと」と「正しい情報を得ること」が、生き残りの鍵であると熱を込める。「社会の変化は本当に激しいから、そこで流されてしまうとすべてがダメになってしまう。だからこそ、変化の先に何があるかを自分で考えて、その波に乗る。これが会社を成功に導く一番の近道だと思っています。そのためには情報を自分の足で集めて、判断する。そうした地道な情報精査が、荒波のような社会を乗り切る力になるんです。また『心の鏡を拭く』習慣も欠かせません。帰社後に家の前で自分の鏡をキュッと拭いてから中に入ることで、仕事モードを完全にリセットし、オフの時間をしっかりリフレッシュする。仕事を続けるためには重要なプロセスなんです」
未来を見据え、揺るがぬ意志で地域に根ざすCross Eホールディングス。これからの風景を描くのは、まさに今である。
鶴田 修一
Cross Eホールディングス株式会社 常務取締役
長崎県佐世保市出身。高校卒業後に日本国有鉄道(国鉄)に入社し、駅や列車乗務を経験。その後転職し、長崎オランダ村(後のハウステンボス)プロジェクトに参画。開業前から運営準備に携わる。1992年の開業後、2001年ハウステンボス株式会社取締役就任、2003年の同社の会社更生法申請の際は、担当取締役として実務を取り仕切る。その後、管財人室長として債権処理とスポンサー選定に携わる。2010年のHIS体制では再度取締役に就任し、長崎上海航路開設運営に携わる。その後、ハウステンボス・技術センター株式会社取締役に転じ、単独株式移転で設立されたCross Eホールディングス株式会社の常務取締役として、2024年8月の福岡証券取引所Q-Boardへの株式上場を実現する。長崎県内初の会社更生手続き(倒産)と株式上場の2つを牽引した人物である。